フランク・ロイド・ライトとは
「フランク・ロイド・ライト」
画像引用元:https://note.com/shijimiota/n/n12b16b0934c0
「近代建築の巨匠」
フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright、以下ライト)は1867年にアメリカで生まれた建築家で、現代の建築にとても大きな影響を及ぼしたことから、同時代にフランスで活躍したル・コルビュジェ、ドイツのミース・ファン・デル・ローエとともに「近代建築の三大巨匠」と呼ばれています。
ライトの建築作品はその時代によって様々な変化を見せますが、その大きな特徴として水平線の多用や流動的な空間の使い方、家具にまでこだわった統一されたデザインなどが挙げられます。特に前者はライト自身がプレーリースタイル(草原様式)と名付けた自然との融合や環境との調和を目指した独特な方法論で、日本では住宅建築にその影響がみられます。またライトがデザインした照明器具や家具はその後に商品化もなされており、なかでもスタンドライト「タリアセン」は日本でも大変人気です。
「タリアセン」
画像引用元:https://shopping.yamagiwa.co.jp/collections/lt_brd_frank_lloyd_wright?srsltid=AfmBOopygzTyLInqph_dzXNsF7k-fRNlUWpBhofitj-zeMEK7QB589__
このようにライトが現在の建築界に与えた影響は計りしれず、2019年にはアメリカに現存する8棟が世界遺産に認定されました。
「日本でも大きな活躍」
そんなライトですが意外にも日本通として知られており、明治から大正にかけて7回も来日しています。特に1917年(大正6年)から1922年(大正11年)までライトの日本作品での代名詞となる帝国ホテルを手掛けるために来日しており、さらにそのかたわらで数棟の作品をも残しています。それらの中には今後の世界遺産候補と目されている作品もあり、北米以外でライト建築が見学出来るのは日本だけなのです。
今回はそんな日本に遺されたフランク・ロイド・ライト作品をまとめてみようと思います。
日本に遺されたフランク・ロイド・ライト作品
帝国ホテルライト館
「帝国ホテルライト館」
画像引用元:https://ht-atelier.com/2018/06/04/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%80%80%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E3%83%9B%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E9%A4%A8%E3%80%80%E3%83%AD/
「日本通だったライトが創造した『東洋の真珠』」
ライトのもう一つの顔「浮世絵バイヤー」時代に知り合った美術商林愛作氏が、その後帝国ホテル総支配人に就任したことでライトに帝国ホテル新館建設が依頼されました。その当時日本にあふれつつあった西洋建築を見て「西洋建築のコピーは作らない」と意気込んだそうです。
4年の歳月を掛けて1923年(大正12年)に完成した帝国ホテル新館ですが、その完成披露パーティの準備中になんと関東大震災に見舞われました。しかし完成したばかりの建物にほとんど被害が無かったところから、ライトの名声はさらに高まったと言われています。
やがて「ライト館」と呼ばれることとなるその建物は、玄関ロビーと吹き抜けの大食堂、高層階に劇場を備えた棟を中心に左右に3階建ての客室棟を広げたまるで巨大な鳥が翼を広げたようなファサードを持っており、ライト自身は明確には言及していないものの1893年(明治26年)シカゴ万博にて日本が建築した平等院鳳凰堂を模したパビリオン「鳳凰殿」からの強い影響が指摘されています。深いひさしの寄棟屋根を持ちマヤ・インカ風の装飾が施された栃木産大谷石が彩る「西洋と東洋」「古代と現代」を融合させたかのような建築は欧米人から「東洋の真珠」と称されました。
「わずか44年での建て替えと奇跡の移築復元」
「博物館明治村」
画像引用元:https://www.meijimura.com/sight/%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E3%83%9B%E3%83%86%E3%83%AB%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E7%8E%84%E9%96%A2/
そんなライト館ですが、戦災を乗り越えたものの東京の急速な需要拡大と老朽化を理由に1967年(昭和42年)に取り壊されてしまいました。取り壊しが報道されると国内のみならずアメリカからもライト館の保存を求める声が届くようになり、政治家をも巻き込んだ様々な議論の結果、玄関部分のみ愛知県の博物館明治村へ部材の移築と様式復元されることとなりました。
「ロビーを彩る光の籠柱」
画像引用元:https://ht-atelier.com/2018/06/04/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%80%80%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E3%83%9B%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E9%A4%A8%E3%80%80%E3%83%AD/
現在、博物館明治村ではライト館の一部が「帝国ホテル中央玄関」として部材の移築と様式復元されており、ステップ・フロアと透かしテラコッタによる光の籠柱に彩られた3層吹き抜けのメインロビーを当時のままの形で見学できます。さらにアラン・ドロンやマリリン・モンローも触れたであろうピーコックチェアやフロアランプなどライトによるデザインの調度品も当時のまま復元されており、ライト建築の最高峰そのままを体感できます。
「オールドインペリアルバー」
画像引用元:https://www.premium-j.jp/premiumsalon/20190606_1586/#page-1
また1970年(昭和45年)竣工の3代目帝国ホテル本館2階「オールドインペリアルバー」ではライト館の壁画やテラコッタと大谷石による美しい幾何学模様、ライトデザインのフロアランプが移築保存されており、これらを楽しみながらグラスを傾けることができます。なお、この3代目帝国ホテル本館は2031年(令和13年)に解体予定。4代目新本館は2036年度(令和18年)完成予定とのことで、そのコンセプトはかつてライト館が称された「東洋の真珠」とのことです。
(文中敬称略)
- 博物館明治村
〒484-0000 愛知県犬山市字内山1番地
開村時間 10:00~16:00
- オールドインペリアルバー
〒100-8558 東京都千代田区内幸町1-1-1
帝国ホテル東京 本館2階
営業時間 11:30~24:00(ラストオーダー23:30)
(情報は2025年現在です。詳細はお問い合わせ下さい)
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